好きになっても、いいですか?

敦志がホチキスを麻子に手渡さずに、コピーの束を手に取ると、自らホチキス留めをし始める。


「さ、早乙女さん!私がやりますからっ」
「あなたは本当に人がいい。ボランティア活動なんて、向いてそうですね」
「私は別に……」
「でも、会社向きじゃないのかもしれない」


パチン!というホチキスの音と共に、敦志が言う。
麻子はその敦志の言葉の意が読み取れずに、ただ立って敦志を窺うだけだ。


「あまりいい人でいると、付け込まれますよ」
「……嫌なことや、おかしいと思ったことはしませんから」
「……ふ。そうでしたね」


敦志は、麻子に秘書課異動辞令を出した時の純一への態度を思い出して、小さく笑ってそう言った。


「……すみません。勝手なことをして。以後、気をつけます」
「そうですね。あなたは何でも屋ではないのですから。コピーやゴミ捨てはほどほどにお願いします」
「し……ってたんですか」
「清掃員の方は、たいそうあなたが気に入っているようでしたよ」


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