好きになっても、いいですか?

『――え?本当ですか?』
「はい。早乙女さんは、いらっしゃるんですよね?」
『勿論です。では、この後に場所をメールにてお教えいたしますので』


そうして通話が切れた。

麻子がこの誘いを受けたのは、早乙女へのせめてものお礼のつもり。

つい最近、中川に迫られた一件の――。

あの時、ギリギリのところで駆けつけてくれた敦志には、どう感謝すればいいかわからない。

その敦志が、自分の指導係をしていて、社内の人間に自分のことを色々と聞かれているのなら、顔を立てる意味ででもそこに行こう。

そう考えた麻子は、花瓶を手に取り、急いで父の待つ病室へと戻った。



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