好きになっても、いいですか?


「はい、わかりました」

カチャリと受話器を静かに置いて、社長室に入ってきたのは敦志だ。


「あの、社長……」
「……なんだ」


麻子はお花の水を取り替え、それをまたローテーブルに戻しているところだった。

なぜか純一が不機嫌なように感じるのは気のせいだろうか。

麻子に対していつもにこやかな訳じゃないのだが、今日は取り分けご機嫌斜めに感じる。
別にそれに怯えることはないのだが、そういう純一と今日一日仕事をすると思うと、麻子の口から小さな溜め息が漏れる。



「お客様がお見えになっているようで」
「誰だ」
「――――城崎様、と伺っております」


その名に麻子もまた動揺する。



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