好きになっても、いいですか?
「また、か」
少々面倒臭そうに漏らすと同時に、部屋にノック音が響き渡り、麻子がドアを解錠して“来客”を出迎える。
「おはようございます。純一さん」
礼儀正しくお辞儀をしてから歩く姿は
まさに“百合の花”。
先程麻子が水を入れ替えた花も霞むほどに、やはり可愛らしく美しい女性に思えた。
「では、私達は仕事がありますので」
敦志はまた気を利かせてそういうと、麻子を連れて隣室へと向かった。
雪乃は会釈だけして、純一に向き直り話し始める。
「ここよりもほかに、行く場所があるだろう」
「あら。でも“婚約者”はあなたでしょう?」
(――婚約者……)
しっかりとそのフレーズを麻子は耳でキャッチすると、社長室に通じているドアが閉まった。