好きになっても、いいですか?
「どうやら、本当にそのようですね」
麻子に聞こえていたことは、敦志にも聞こえていたようで、ぽつりとそう呟いた。
麻子にとって、純一に婚約者がいようがいまいが関係のないこと。
(あんなヤツの妻になるだなんて、逆に可哀想だわ)
そう頭で考えた。
でも、心はなぜか落ち着かない。
(大体、なんであんなヤツだと思ったの?昨日……あの河原で倒れた時の微かに感じた雰囲気を――きっと、お父さんから余計なことを聞いたからだ)
「――さん……芹沢さん!」
麻子が一人考え事をしていると、敦志が心配そうに自分を覗きこんで呼んでいるのに気が付いた。
その距離があまりに近く感じたので、麻子は慌てて後ろに下がる。
「はっはい、すみません!なんですか?!」
「――具合、まだ悪いですか?」