好きになっても、いいですか?
そんなことを考えながら、ボーっと外を見ている時だった。
余りに脳裏に鮮明に記憶されているから、幻影かと思ってしまった。
しかし、それは現実のもので。
「城崎……雪乃、さん……」
一人で歩いているのに、どこか嬉しそうにしてあるく小柄な女性。
麻子のいるオープンテラスを横切って、ふわりと髪を靡かせて去って行った。
(タイミングが良すぎ――)
どうしてこうも、純一に関わることをいつも考えているのだろうか。
考えないように、気付かないようにしているはずなのに。
それなのに、麻子の一度落ち着かせたはずの心が、またざわざわと音を立てて騒ぎだす。