好きになっても、いいですか?
「今日は芹沢さんに残ってやってもらいたいことがある」
もうそろそろ終業時間という頃、純一が敦志と麻子がいる前でそう言った。
「最近物騒な事件も多いですし、遅くまでかかるようなものでしたら私が――」
「いや、そんなに時間は取らない。心配なら、俺が送る」
敦志の意見を妨げて、純一が言いきった。
麻子はそんな二人の様子を見つつ、ひとこと残業を了承した。
敦志はこの時に何かに気が付いた。
純一の雰囲気がこの間と違う――。
定まらない気持ちが、今、揺らがないものになった、と。
「……確認したいことがあるだけだ」