好きになっても、いいですか?
「最終確認をお願いします」
麻子は手にした書類を純一へ渡した。
敦志ならば、大抵純一がデスクに向かっていればその真横に立つ。
それに比べ、麻子はあまりデスクの傍には近づかない。
こうして何か用件があるときも、決して横ではなく正面に立って顔を見据える。
無言で純一が目を通すと、パサッとデスクにその書類を落として麻子を見た。
「―――問題ない」
「……そうですか。では、あとは何か?」
きっともう帰してくれる、と、麻子はそう思って純一に言ったのだが。