好きになっても、いいですか?
「……君に、確認したいことがある――と、言っただろう」
「は……」
「まさか君が、少し前のことを忘れるなんてことはないだろ」
純一がそう言って、大きな椅子の背もたれに体を預け、足を組んで座わりなおす。
その姿を見れば、多少リラックスしているような雰囲気にもとれる。が、純一の言う“確認したいこと”が、なんの仕事の話なのかが見当つかない麻子には、全く気が抜けなかった。
「いえ。勿論、覚えてますけど……」
麻子は、いつもの威勢はどこへ、といったような力ない返答をする。
いくら記憶力がよくても、機転がきいたとしても、誰かの頭の中まではわからない。
まして純一は、今の麻子の中で最も謎多き男――――。