好きになっても、いいですか?

純一は、克己の言うように本当に不器用なだけなのかもしれない。


ぶっきらぼうだったり、冷酷に感じたり。

出逢った時なんかは特にそんな風にしか到底感じられなくて。


でも、秘書課に異動してから見る純一の行動には、いつも人間味がある気がする。


わざわざ、麻子の父の病院へ足を運んだ。


それも一度じゃない。


さらに自分の損益関係なく、自分のことを気にしてだと父も言っていた。

それは初め疑っていたが、彼の薄茶の瞳と、大きな熱を帯びた手を感じた時から納得し始めていた。


トップに立つ立場ながら、汚い嘘をつくような人間にも思えない。


それは近くで見ている麻子が一番わかること。




「―――どうすればいいの……」



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