好きになっても、いいですか?


翌日も、同じように出社すると、純一は上着を掛けて椅子に体を預けた。

デスクの上にはいつもと同じ、昼食用のブルーの小さなバッグ。


「おはようございます」


その声に弾かれたように純一は顔を上げた。


「どうぞ」


そういって、いつものコーヒーをデスクに置かれる。
トレーを脇に挟み、背を向けて去っていく麻子を、純一はただ瞬きせずに見届けるだけだった。


「……ちっ」


小さく舌打ちをしたのは、自分がまるで高校生のように好きな相手を目の前にして何もできないでいるから。

どうしていいか見当もつかない。

ただ、もう目が、心が麻子を追うだけで。


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