好きになっても、いいですか?

「あら?早乙女様、おひとりですか?」


その声に驚いて敦志が振り向くと、横には雪乃が戻ってきていた。


「あ……今、出て行ってしまって……。すれ違いませんでしたか?」
「あ。私、裏口から入りましたので……出て行かれた、って、アテがありまして?」
「いえ……」


アテがあって出たのではなく、自分の言葉で純一を動かしてしまった気がする敦志は、歯切れ悪くそう答えるしかなかった。

そして、そんな自分を見つめる雪乃の存在が、未だに腑に落ちずに胸にひっかかり続けている。


「城崎様。先程から気になっていましたが、それは……?」
「え?ああ!……ちょっと、お弁当を」


俯き、少し照れて頬を染めながら、雪乃がそう答えた。
そんな雪乃の想いを目の当たりにして、敦志が堪え切れずに口を出してしまう。


「城崎様……。もしも……もしも、純一くんから破談を申し込まれたら――どうなさいますか」


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