好きになっても、いいですか?

「え?」


ほわん、とした雰囲気の雪乃は、敦志の言っていることがわからなかったようで。きょとん、とした顔で小首を傾げて敦志を見上げていた。


「いえ、ですから――……」


敦志がもう一度、今の言葉の意図を説明しようとした時に雪乃の表情が少し変わったことに気付き、言葉を止めた。

雪乃は、“敦志の言っている意味は理解している”が、それでも疑問符が頭に浮かんでいたのだ。


「早乙女様。なにか、勘違いなさってるのでは」
「――え?」


雪乃は手にある、弁当が入ったバッグを両手で大事そうに抱えながら、敦志を真っ直ぐ見て言った。



「私は、確かに親が決めた縁談で、藤堂に嫁ぐ予定の“婚約者”です。そのお相手に名前があがったのは、純一さんということも事実。でも――――……」



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