好きになっても、いいですか?

麻子の目からは一筋の涙が落ちていた。


手を振り払おうとする麻子を、純一は立って自分の中に閉じ込めた。


思い返せばいつでも助けてくれた。

父のことも、昨日のことも、過去のことも。


不器用で、淋しそうで、でも本当は手の――――心の温かい人。



「君は、初めから罪なんか犯してない」


そうやって、いとも簡単に長年縛り付けていたはずの鎖から、麻子を解放してくれる。



「昔も、今も、これからも」


純一の言葉に、麻子は声を殺して首を横に振るしか出来ずにいた。

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