好きになっても、いいですか?
「このオフィスにはいません。が、かなり下の……子会社の方に異動をして頂きまして。それで――」
「ベトナムだ」
「べ、ベトナム?!」
思わず声を上げてしまう麻子を気にもせずに、純一はつらっと続けた。
「うちは、下では物も作ってるからな。工場に飛んでもらった」
「な、なんで……」
なぜ、職を奪うことまでしそうな純一が直接顔が見えないところとはいえ内部に留めておくのか。
まさか純一に限って、そのあたりの“情”など持ち合わせているようには思えないのに、と麻子は思った。
「“なんで”?あんな下衆……ただ、ここから放りだしてもどうせアイツのことだから上手く別のとこにこぎつけるだろ。そんなんじゃ、俺の腹の虫は収まらないからな」
要するに、純一は自分が監視できる距離で中川をじわじわと追い詰めたいらしい。
(お、鬼……)
「それと、相川美月」