好きになっても、いいですか?

その名を聞いて、麻子はまた顔を上げた。


「アイツは昨日から見てない。この分だとこのまま身を隠すつもりだろう」
「あ……じゃあ、やっぱり私と宇野さんを襲わせた犯人は――」
「相川だ。まさかここまでヒドイ女だとはな。やはり女など――」


純一がそこまで言い掛けて口を噤んだ。

“女など”。

今までなら、その続きを容赦なく吐き出しては態度に現わしてきた。
が、今は違う。
目の前の麻子の存在が、それを証明しているのだから。


「……どうせ、あの手の女は男に縋るしか能のない女。今に干からびる」
「……」


そのまま放っておく。それは麻子も賛成だった。
元より自分から面倒なことは避けていくような性格だ。わざわざ追い掛けてまでどうこうしたいとは初めから思ってもいなかった。


「恐らく、肩書目当てで男を漁ったりするのが目的の部類だろう。それはこの先叶わないだろうな」
「?」


純一の交流関係、取引関係者に美月の情報を軽く流すだけであっという間に“警戒すべき女”だ、ということは知れ渡る。
それと同時に“そういう女”を求める男は逆に罠をしかけて待つかもしれないが。

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