好きになっても、いいですか?

「宇野さんは、全ての責任をとって退職いたしました」


敦志が言ったことを、麻子は予想していたので驚くことはなかった。


「そういうことだ。しかし、そんな事情は関係なく時間は進む。たまった仕事は待っていてくれない」


そういって、純一は足を組んで手元の書類に目を落とした。


「とりあえず、仕事に――」
「宇野さんは、どのくらい前にここに?」


純一の言葉を遮る形で、麻子は口を開いた。

なぜ、そんなことを聞く必要があるのか?と思う純一だが、麻子の真っ直ぐな姿勢と視線に捕われてそれを口にすることが遅れてしまった。


「もうかれこれ30分は経ったかと」


純一に変わってそう答えたのは敦志だった。


「30分……」


麻子は少し考えたように視線を落として呟くと、すぐに顔を上げて純一に言った。


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