好きになっても、いいですか?
「せ、芹沢麻子……!」
「っ……はぁっ……し、知ってた……って?」
「……は?」
「っ……だか、ら――中川常務と相川さんの、企みを」
麻子の言葉に、麗華は合わせていた目をふっと横に逸らした。
すると、麻子がコツコツっとヒールを鳴らして麗華との距離を縮めて麗華に影を作った。
麗華が再び視線を麻子に向けると、思い切り麻子の手が飛んできた。
「――きゃっ!」
左の頬を抑えて麗華は短く声を上げた。
そして目を見開いて麻子を見る。
「あなたは、あなただけは。正面からぶつかってくる人だと思ってたのに!」
「な!」
「確かに懇親会の時や、辞表のやり方は陰険だったけれど。でもあなたは私に面と向かって言いたいことを言ってくる、強い人だと思ったのに!」
「――――強くなんか、ないわ」
麗華は頬に手を抑えたまま、麻子を見てそう言った。
「私が強かったら……本当に強かったなら、こんなふうに辞めることになんかならなかったでしょう?」