好きになっても、いいですか?

麻子が、改めて場違いな部署に来てしまったのかもしれない――。そう思った時に、敦志がデスクの横にある並んだ棚に近づきながら更に続けた。


「ああ。あと、まだ少し時間はありますから、ここの本や資料等目を通してみて下さいね。今後、時間があるときはしばらくはそうしてください」
「は、はい」
「では、少し私は社長に私用のお話がありますので」


敦志はにっこりとそういうと、先程戻ってきた扉を叩き、隣室へと消えていった。


「…………」


麻子は数歩棚に歩みより、その本棚を見上げる。
棚は麻子の身長よりも僅かに高く、中に納められている資料やらは軽く3桁はありそうだ。しかもその棚もひとつじゃなかった。


(はぁ。さすがにこれは時間がかかりそう)


次に、新しく与えられた自分のデスクに視線を移すと、庶務の時とは違う、と一目瞭然でわかるスタイリッシュな高そうなデザイン。
ますます麻子は、今自分がこんなところに立っていることに違和感を感じずにはいられなかった。



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