囚われの姫


死ぬ間際、ティアラのことを”魔物”と罵りながら死んでいった、セロクの母である故王妃殿下。



その母を愛するがために妹のことを信じられず、いつしか”魔物”として扱うようになった王セロク。




アルクは震えそうになる自らの体にこれでもかと力を入れ、荒い息を吐き出した。



(ティアラ様が殺されるならば…)



…自分も一緒にこの世を去ろう。




アルクは、ただでさえ戦が好きな王に忠実でいるのに疲れていた。



愛する者のために頑張って来たというのに、それを失うという勧告は、アルクを今までになく無力にさせた。





アルクが静かな、だけど固い決意を胸に誓ったとは知らず、セロクはそれから10日経った朝、国内全ての兵士を連れ、ルシカとシャターナの境界へと旅立つことになるのだった。






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