囚われの姫




今、兵士にせき立てられ、地下への階段を降りている自分に松明の光など、期待できるはずがない…。








「着いたぞ。」




長かった階段はいきなり現れた開けた空間でで途切れていた。

…いや、先にも下に続く穴はあるのだが…まだ整備されていないらしい。




ぽっかりと開いた黒い穴は、ティアラの体にぞくりと奮えをもたらす。


(…まるで……何かを飲み込んでしまうかのようだわ……。)





「…立ち止まらないで歩き続けろ!」




ティアラが先に目を奪われていることに兵士たちは苛立ちを隠そうとしない。




早くこの任を解かれ、地上へ帰り、1日中移動し酷使した体を休めたいのだろう。




階級の低い兵士たちは馬に乗るなど叶わず、自らの足でゼナまでたどり着いたのだから。



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