白の森
その布をスタンの傷を負った腕に当てて自分のスカートの裾を破るとそれできつく縛った。

「手際が良いな」

スタンが女の腕を誉めた。

「こんなの簡単よ。誰でも出来る」

スタンの言葉に女は淡々と返していく。

「いや、この手際は誰でも見つけられるものじゃない。痛みが引けてきたよ」

「それは、死に掛けているから感覚がないだけよ。もう少ししたら痛みが戻ってくるわ」

とんでもないことを口にする女だと、アッシュは怪訝な顔をした。

「その血の付いた服は置いて行ってもらうわ。今、うちには血の匂いは出来るだけ持っていきたくないから」

女は大熊の名前を呼んだ。

「ビクトール、この男を運んで」

大熊は主の言うとおりに、スタンを背に乗せるとゆっくりと歩き始めた。

「ついて来て」

女について森の中を歩き始める。道のない森を迷うことなく歩いていく。女に付き従う狼は彼女の顔を見ながらあるいていく。

アッシュはその背を見て、彼女が森の魔女ではないかと思い始めていた。



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