白の森
しばらくして女が戻ってきた。

その手には、温められたミルクとスープがトレイにのせられていた。

「お前、一体何者だ」

剣を抜き、女に突きつけた。女は、動揺することなく剣先の向うのアッシュの顔を見た。森で、見たときよりも鮮やかな赤い目は、怯えなど感じさせなかった。

「ただの人間よ」

「この国は、素人の医療行為を禁止している。それを行うお前は一体何者だ」

「国のことなんて知らない。私はここで生きてるだけ。この剣、下げて。これ、置けないから」

睨み合う、二人の視線はお互いに引くことはない。

「二人ともやめないか。娘さん、それ頂いても良いかな」

スタンが二人の間に割って入った。痛みで熱が出始めているのか、汗が酷い。

「これ、飲んで。熱が下がるから」

女はトレイに上に置いていた、小さな包みをスタンに渡した。

「スタンさん、飲むな。こいつは犯罪者だぞ」

「勝手にして、生きるのも死ぬのもココでは自由だから」

女はそういうと、トレイを床において出て行った。

「スタンさん、どうして」

「助けてくれると自分から言ったんだ。殺すはずがないじゃないか」

「それでもあいつは、国の法律を」

「それで、何人が助からなかったんだろうな」

スタンの言葉にアッシュは眉根を寄せた。

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