テレビの中の、人。

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「あ~あ、行っちゃったね。」

ミズキがため息つく。

「だけど、こんなに接近できたよ!まじありえない!」


あたしは、このミラクルの余韻に、再度浸った。


そうなのだ・・・。

一応、一般人とは違う人と、触れ合えた。

端から見ても、どうってないことだけど、

二人には、夢のような一時だった。



「りえ・・・、あたしヤバイかも。タイチに触られた時、めちゃくちゃ嬉しかった!」


ミズキは、タイチにゾッコンみたい。

あたしも・・・、

あたしも、サックンが好き・・・。


大人しいながら、だんだん喋ってきてくれたサトシ。

隣りにいた私には、よく話しかけてくれた。


あんな、大人しいサックンが、

劇場では、まるで別人のように、喋り、

みんなを笑わせ、堂々と、ネタをしてる。


この、「ギャップ」もたまらない・・・!

このギャップ・・・、

私だけが、知ってることでありたい・・・。

もっともっと、

みんなが知らない、「サックン」を知りたい・・・。




午前3時になり、閉店時間になった。

後輩の、マミが、

「あの、さっきのビタミンKですよね?」

「指名されてましたよね!すごいですね!」


マミだけじゃなく、次々と、女の子達が言ってくる。

やっぱり、こないだの来店で、

Komachiの間では一躍有名人になったみたい。



あたしとミズキは、

なんだか、広まるのが嫌な・・・

二人だけのものにしておきたいような気分になり、

そそくさと帰った。




「テルメ行こ♪」

いつものように、サウナに向かった。


汗をかきながら、

今夜のサックンのことばかりが、頭によぎり

ニヤケた。


二人して・・・、

「二人」にハマった夜ー



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