探偵事務所は休業中

すぐに無機質なコール音が耳に届く。
一回、二回、三回……

「おっそいなー」

少々苛々しながら、指で机を叩く。
五度目のコール音の後、ようやく受話器がなる音がした。

思わず、彼は罵声を浴びせた。

「おっそい!!何回コールしたと思ってんだこの野郎!さっさと出ろよな!」

しかし、沈黙しか返ってこない。
相手の息遣いだけが微かに聞こえる。

なぜ応対してくれないのか。
新手のあしらい方なのか。
文句の一つも垂れてやりたいところだが、生憎今は時間がない。

彼は早口で捲し立てるように言う。

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