ブルーブラック2
第四章

1.相手を想う心



「はぁ···」


開店早々重い溜め息を吐いているのは百合香だった。


昨夜も言えなかった。

隼人と出掛けたことも、“桜”を失くしてしまったことも。


ふと左胸のポケットを見る。
けど、やはりそこにはいつもある筈のものがない。


百合香にとって、あの“桜”は特別なもの。

智が手掛けてくれて、初めてプレゼントされた思い出の大切な宝物。


今左手にはめてあるマリッジリングと同じくらい大事なものなのだ。

そして、そのマリッジリングを失くしたのと同等大変なことで、その分智にも打ち明けづらくもなるのだった。


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