ブルーブラック2
百合香がそんなことを言うなんて、夢にも思っていなかった智は暫く目を大きくして百合香を見つめ返していた。

自分を求めて貰えることが、こんなにも嬉しくて堪らないものだとは――。

だけど、それはあくまで相手が愛するたった一人の女性、百合香だからだ。


「――ストレートに言われるのは初めてだ」
「···だって···」
「じゃあ」


智はゆっくりと百合香の顔に近づいて行く。
百合香はキスをされる、とドキドキしながら目を瞑ると一向にその気配がない。
そっと目を開けると智の顔が真横にあって、彼の息が耳にあたっていた。


「俺も、百合香の子が欲しい」


耳元で囁かれたその低い音は、百合香の背筋をゾクっとさせて、心臓がきゅうっとなる。


百合香は智の頭を優しく包んで髪の毛を掴むように、抱きしめてキスをした。

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