ブルーブラック2

「····」

何も言えずにただ百合香は智の隣にすとんと座る。

心なしかいつもよりも少しだけ、距離を置いて。


(ああ、まただ。こういう時ってやたらと掛け時計の秒針の音が気になってしまう)


静かなリビングに聞こえる時計の針の音。

それが余計に百合香の心を強張らせる。



「―――百合香」
「はっはい!」



百合香は肩を上げて、返事をした。
自分が今から何を言われるのか、ドクドクと心臓を鳴らしながら。


「斉藤に、さっき何もされなかった?」

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