ブルーブラック2
「全然そんな気配ないです··」
「そう。あ、でも気にしすぎちゃだめよ?きっと今、空からあなたのこと捜してるのよ」
「そうですかね···」
「そうよ。きっと百合香ちゃんがあまりに素敵だから取り合いをしてるのよ、赤ちゃんが」


まどかの言葉は呪文のようで、魔法にかかったかのように百合香は胸が軽くなる。まどかの笑顔にもその効果があるようで、百合香はいつまでもまどかの顔を見つめていた。

百合香がまどかに相談していたこととは、先程も智と少し話題になった“子ども”について。

百合香は智と一緒になって1年。

それまで仕事をしてはいたものの、いつでも母親になる心準備は出来ていた。むしろ望んでいた。
そういうことは勿論新婚でもある為に少なくはないと思うし、大体にして“まだ”1年。しかし百合香にとっては“もう”1年と感じてしまう。


1年頑張ってもダメならこの先ももしかして――


そんな風に捉えてしまうのは百合香の悪い癖でもあるが、現実に、今の時代は欲しくてもなかなか叶わないという夫婦が溢れているのだ。

そんな不安定な心の内をまどかに打ち明けてから、百合香はほんの少し前向きな気持ちになれていたのだった。


「ありがとうございます。じゃあ私戻りますね」


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