ブルーブラック2


「はあっ。今日も無事に終わった・・・」


そうぼやいたのは坂谷。
終日忙しかったわけではない1日だったのだが、閉店間際についたお客がなかなかはっきりとしない雰囲気でほとほと坂谷も困って疲れた、という訳だった。


「ふふっ・・お疲れさまでした」


百合香がそんな坂谷の事情をずっと見ていたので気遣って声を掛けた。


「確かにすぐに決められるものだ、なんてこっちだって思ってないけどさぁ。あんな風に片っ端からだとちょっと疲れちゃうな・・・」


坂谷は力なく笑って答えると、ショーケースの上のペントレーを手にした。

それもそのはず。
試筆するのが悪いという訳ではないのだが膨大な本数を試していったので後片付けも大変な様子だった。

百合香はまたくすくすと笑うと坂谷の持つペントレーの他にも洗浄しなければならない万年筆が10数本並んでいる所から1本手に取った。


「私が洗浄しますから、坂谷さんは日報でも書きながら休んで下さい」


そして百合香はきゅっと万年筆を回して軸を外した。


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