見てるのはあなたじゃない
「……十分、変態ね」

それを見抜かれていたことがまた悔しい。
だけど目の前の男はそんな駆け引きに興味はないようで、首を傾げると満足そうに目を細めた。


「ほらね。俺達同じ気持ちでしょ」

無視してグラスを口へと運ぶと肩を掴まれた。
整った顔が耳元へと近づいてくる。

「……杏莉」

その声色はあまりにも心地良い媚薬。
一瞬で頭の奥が痺れた。

「認めろよ。俺達惹かれあってるんだよ」

目を細めてグラスの中の液体を飲みこんだ。
今夜きっと私は望んでいたものを見られるんだろう。

私の上で揺れる喉仏と切なげな彼の表情。


まだ見たことのない場面が脳裏で再生されて、
身体の奥がじんと熱を帯びた。
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