裁き屋始末録
それから数日後。
「ただいま…」
「あ、お帰り。
そよ子、塾の瀬尾先生が心配して来て下さってるわよ」
「…え…」
そよ子はギクっとして青ざめ、後ずさりした。
「やぁ、こんばんは」
にこやかに瀬尾は出迎えたが、そよ子の表情から並々ならぬ事情を感じ取った。
「ちょっと、外で話そうか…」
「…先生、出会いが人生を変えるって言ったよね。
私…私ね、
出会っちゃいけない人に出会ってしまったみたい」
「どういうこと?」
「私、あの大学に入りたかった。
大好きな先輩が去年入学したから、また会えると思って。
そしたら…」
そよ子は、うつむいて涙を流しながら続けた。
「その先輩から電話があって、俺と俺の先生が掛橋になって入学させてやるから500万持ってこいって…」
「つまり、裏口入学の手引きをする、と…」
「うん…でも…
そんな金額用意できないよって話しに行ったら、先輩と仲間が待ってて…
金が用意できないならって…」
「もういい、
それ以上言わなくていい」
瀬尾は、そよ子の話を遮った。
(塾に来なかった間に、有馬は外道どもに…)