裁き屋始末録

再会…そして断末

 
「久しぶりね」


午後8時。

[いつもの場所]で待っていた秋野の元に、千早がやって来た。


黒い革のライダースーツ。

栗色に染まったロングヘアーが街灯に照らされ、夜風を受けて幻想的になびく。

香奈や朱乃には無い[大人の色気]を漂わせている女性だ。


「お前、俺がココで待ち合わせするのが嫌いな理由、知ってるか?」

「?」

「児童公園の[大ダコの滑り台の中]なんてなぁ、ダイの大人が待ち合わせる場所じゃ無いだろうが!」


この公園は中央に巨大なタコの滑り台が鎮座しており、近所の子供達の間では[タコ公園]の愛称で親しまれている。


流石に午後8時ともなると遊んでいる子供は居ないが、それでも子供嫌いな秋野にとっては居心地の良い場所では無い。

昔、この場所を待ち合わせ場所に指定したのは千早だ。


「あら、私は子供が好きだから全然平気よ。
それよりアッキー、頼み…」

「断る」


秋野の勘だ。

千早の頼みってのは、今までロクなコトが無かった。

木の上の猫を助けてとか、婆さんの財布を探してとか。

裁き屋が依頼を受け、引き受ける仕事では無い。


「今度のは違うの。
裏業務を頼みたいのよ」

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