掻き鳴らす、危険な指先


溢れる感情に堪らずため息を吐くと、隣から突然声が掛かった。


「悪い、煙かった?」


「い、いいえ、大丈夫です……」


不意打ちに驚き、語尾が掠れる。


それに笑ったのだろうか。いつもはクールな彼がふふ、と、声を上げる。



「髪、食ってるよ」


その綺麗な指が、何の躊躇なく私の頬に触れた。


「……あ、す、みませ……」


触れられたところから酷く熱を帯び、もう顔を上げていられない。



「打ち上げ行くかー」


その声が掛かり、みんな席を立ち始める。


彼は煙草を灰皿に押し付けながら、行くでしょ? と訊いた。


< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop