もう二度と、返さない
「変態」
悪意をこめて言ってやると巽が笑った。
始発の時間だけどこのままどこか行ったらバレバレだよな、と。
窓の外の明かりに気づく。いずれみんなも起きるだろう。
そこに私たちがいなくとも、笑ってからかって許してくれる奴らだ。
「行きません、この変態」
そんなの、ご免だけど。
「私は眠いの。だから」
でも。
「その脚、貸してよ」
いい加減、私のものになって。
巽の口からため息が聞こえた。
「おやすみ」
けれどその表情は悪くない。
解放された私は、ようやく眠りとこの腿を手に入れた。
【end】


