黒い翼


「久しぶりだね、京。二人でいるのは何年ぶりかな」


僕は彼女のベッドに腰掛け、彼女の髪に触れた。


ギシ…と音が鳴る。


「……ダレ…」


起こしてしまったのだろうか。


彼女が眩しそうに目を開ける。


額に汗がにじんでいた。


「…なに?」


綺麗な赤い瞳を僕に向けて、ゴクリと唾を飲み込んだ。


だけど彼女は眉間にシワを寄せて、プイッと僕から顔を逸らし、寝返りを打った。


「そんな状態なのに、欲しがらないの?」


敢えて彼女の耳元で囁き、そうさせるように促す。


ピクリ、と彼女が反応する。


だけど返ってきたのは、思ってもみない言葉だった。
< 25 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop