黒い翼

悲愴

ガシャガシャーンッ


自分の部屋に入ろうとすると、向かいの部屋からお皿が5、6枚くらい割れる音がした。


「おまっ、何してんだ!!!」


向かいは紫葵か。


「…………………………」


「京!!?血ィ出てんじゃねえか!!!」


……確かに。


彼の言う通り、これは…。


梗の血の匂いがする。


……だけど、梗は死んだと彼女が言っていた。


「は?〝これお湯に浸けたら更に出るらしいよ〟?全く。…んな暢気なこと言ってないで手当てするよ!」


呆れたような、だけど楽しそうな声が僕の耳に届く。


…彼女は、僕といて楽しかったのだろうか。


彼女は、何故死んでしまったのだろうか。


彼女は、もう僕を見てくれないのだろうか。


僕は、また一人になるのだろうか。
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