黒い翼
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「あ、シキ。丁度いいところにいた」


頭にタオルを置いて水分補給をしているシキを見つけたあたしは、シキの元へ駆け寄る。


「ん?ナニ?」


「今時間ある?」


「いや、どう考えても部活中なんスけど」


確かに彼を見ると、ランニングユニフォームだ。


「じゃぁ、放課後」


「あー…空いてないこともないけど、」


「けど?」


チラリとあたしを見て、シキは言葉を止める。


「柊の為に時間を割くっていうのが癪なんだよな~」


「………マジカ…」


シキの言葉に絶望した。


周りにいるシキの部活仲間がゲラゲラ笑う。


「冗談だよ、馬鹿」


「焦らすな、全く」


ホッと息を吐いて、少し困ったように口角を上げる。


「なんで?」


「嫌われたかと思った」


「嫌いだったら相手にしてねー。で?何か用?」


「あぁ、そうだったそうだった」


「忘れるくらいの用事か。なら大したことないな。よし、帰れ」


「あたしにとっては大事なことなんだけど」


「嫌な気がするから断っておく」


「…………じゃぁ、オムライス」


「マジ!!?その話乗った!」


「数学教えてくだ――」


「やっぱ止めた!」


「!!?」


あたしのオムライスは絶品だとシキが自分で言っていたのに、そんなにあたしに数学を教えるのが嫌なのか…っ。


「×三日分」


「……………仕方ないな~…」


シキは三日間食費代が浮くことを知らないのだろうか。


それともそんなにあたしに数学を教えるのが(略


あたしは小さくガッツポーズをする。


「んじゃ、ここらで待ってて。もうすぐ部活終わるから」


「なんで三年なのにまだ部活やってんだ?」


「俺、もう進路決まったし。暇だし」


「あぁ、そう」


「んじゃ、買い物行かないと材料ないし、そろそろ暗くなるし……ちゃんとここにいろよ」


「……………子ども扱いすんなよ……」


あたしは遠くなるシキの背中を見ながらそっと呟いた。
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