オークションの悪戯-イタズラ-
慌てて暁人さんの元から逃げだす。

「この部屋から逃がさないよ?」

鍵が何故か回らない。

「なんで…あかないの!?」

「ナンバーでロックも

掛けられるからね」

暁人さんがニヤリと笑う。

ドアノブを何度も回す。

「無駄だって言ってるでしょ」

「い…や…っ」

涙がこみ上げる。

暁人さんにクッションを投げる。

私は力が入らなくて暁人さんまで

届かなかった。

「も…やだ…っ」

涙で擦った手がベタベタになる。

「降参する?」

私の顔を見下ろす。

悔しい、

けど私には何もできない。

「何を怒ってるか知らないけど」

私の顎を手に取る。

その手がさっきまで伊原さんに

触れていたと思うと気持ち悪くて、

「触らないでっ!」

暁人さんの頬をはたいていた。

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