赫の守護〜無自覚溺愛吸血鬼〜
「探して貰わなくても結構です」

冷たく言い放ったセラの菫色の瞳には静かな怒りがあった。

だがジルはそれを知っても笑みを絶やさない。


「相変わらずつれない人ですね」

「つれなくて結構。貴方のおかげでキサラ様が大変な目に遭ったでは無いですか」

怒りの理由を口にするセラだったが、対するジルは悪びれも無く笑う。


「でも良かったでしょう? そのおかげであの伯爵も自身の心に気付いたのですから」

「……」

「側で見ていてもどかしかったのでは無いですか? 伯爵は初めからキサラを意識していたのに、中々それに気付か無いのですから」

「……」

「それに伯爵と結ばれる事で、キサラの不運は落ち着いて来るのでしょう?」


不運を撒き散らすキサラ。

それは本来守られる事で抑えられる不運が、守られなかったために抑えが効かなかった所為なのだ。
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