アンバランスな手首
「見てますよね、石田さんっていつもぼくを……っていうか、ぼくの手首を」


 それは聞いたこともないような、意地悪な声。



 その声で、ここがどこだとか、自分の立場とかそういったことの全てが吹き飛んだ。

 私は、彼の手首に唇を落とした。

「捕まえたと思ったら、捕まったなぁ」

 雨にとけるような甘い声とともに。
 彼の唇も、私の手首に落ちてきた。
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