劣情誘うスーツ
これ以上動揺してたまるか、と努めて自然に彼から視線を外す。
──私は
スーツの男にやたらと弱い。……それは、誰にも言えない秘密。
「あー、苦しー」
隣の机に凭れながらネクタイを緩ませる仕草が視界に入り、図らずも胸が鳴る。
そんな私の状況など知る由もないこの男は、突然、私の顔を覗き込んだ。
「なぁ。資料室付き合えよ」
「え、何?!」
強引に腕を引かれ、彼は資料室の扉を閉めると、あの資料さ、と奥を指差す。
「えー、どの資料……」
資料に気を取られていると、後ろから私の両肩に手が置かれ、びく、と体が震えた。