会いたくなったら、上を見上げて
私と彼が知り合ったのは中学校卒業してすぐ。お父さんが事故に遭ったと会社から連絡があった。

「N病院に運ばれたって。志穂ちゃん行ける?」

「……はい。大丈夫……です」

小さい頃からお父さんと二人暮らしで、いつか親は先に……って、どこかでは思っていたけど。
突然一人になるかもと思ったら……。

「こわい。こわいよ」

体が震えて立っていられなかった。けど

“お父さんのとこに行かなきゃ”

そう思うと、とっさに家を飛び出した。
はぁはぁと白い息を吐きながら走った。

「こわい。でも行かなきゃ」

夜の街は静かで、風を切る音が伝わってくる。
いつもの道なのに、いつもと違う。

「どこだろう?」

目の前がだんだんかすんでいく。
気づいたら私は泣きながら走っていた。
消えかけの街灯がビリビリと音をたてる。
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