会いたくなったら、上を見上げて
しかし、手術室には運ばれなかった。

「いつ、こうなってもおかしくなかったんだよ……」

先生が教えてくれた。

「……ほかのほかの病巣か肺移転。壮絶な痛みなのに、起きて、動いて……。呼吸出来ていたこと全てが奇跡に近い……。こうなったら、意識はおろか、もう……」

それを聞いた私は、今日健ちゃんと待ち合わせした、待合室に腰をおろして、そこから見える満月を見つめていた。
満月を見ていたら、健ちゃんの事、いろいろ思い出してきた。

‘志穂が俺になったら、痛くてすーぐ死んじゃうな’

‘ん〜。そりゃもうバツグンに☆’

‘いつ何が起こっても……、おかしくないから……’

‘ごめん……’

‘思い出は笑って’

‘俺の勝ち〜♪’

‘シロップの事、頼んだよ’

‘今日……夜デートしない?’

‘ナイショ♪’

‘十四歳まで生きられないはずだった、しぶとく生きてる十七歳’
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