いきなり王子様
それからすぐ、璃乃ちゃんの瞳からは涙が零れ始めた。
ひくひくと息を詰まらせながらも、必死でこらえようとする姿は切なくて、目の前でしゃがみ込む私にはどうしていいのかわからなかった。
自分の気持ちを上手に整理できない璃乃ちゃんは、どうして泣いているのかを私に言う事もできない。
『えっと、えっと……璃乃のせいで、おかあちゃんはいつも……自分が悪いって……』
途切れ途切れの言葉をどうにか口にして、何度も大きく呼吸をしながら私を見つめてくれる。
私はカバンからハンカチを取り出すと、涙でびしょびしょになっている頬をそっと拭った。
それでも止まらない涙の原因が、璃乃ちゃんのお母さんにあるらしいことは、何となく察する事ができたけれど、具体的な理由はわからないまま。
『璃乃ちゃん、落ち着いてゆっくりと話してみようか』
璃乃ちゃんの前にしゃがんでいた私は、立ち上がると再びベンチに腰かけた。
隣で泣いている璃乃ちゃんの体を優しく抱き上げると、そのまま私の膝の上に横抱きにしたままおろした。
初めて抱き上げたその体はやっぱり軽くて、こんな小さな体のどこから大量の涙が溢れてくるんだろうかと切なかった。
と同時に、こんなに小さな子の胸を痛める原因が何かを知りたかった。
『璃乃ちゃんの涙が止まって、いつもみたいに可愛く笑えるまで、こうして抱っこしてあげる。だから、安心していいよ』
そう言って璃乃ちゃんの頭を撫でてあげると、彼女の涙はまだ止まらないながらも、どうにか笑顔を作ろうとした。
璃乃ちゃんが見せる作り笑顔を見た瞬間、言葉にできないほどの悲しみを感じた。
そして、そんな私の思いを気取られないよう、やたら明るい声で。
『さ、時間はたくさんあるから、璃乃ちゃんの事を色々と教えてくれるかな?』
私の言葉に、どうしたらいいんだろうかと不安げな顔を見せた璃乃ちゃんは、それでも何かを必死で考えて。
そしてゆっくりと、お話してくれた。