いきなり王子様
* * *
璃乃ちゃんの涙に心が痛んだあの日のことを話すと、竜也は予想通り悲しい瞳を隠すことなくため息を吐いた。
竜也の膝の上にある私の体には、微かに震えている指先。
きっと、璃乃ちゃんの苦しみに同調しているんだろうと思う。
この家に来てからずっと、璃乃ちゃんへ向ける竜也の優しい眼差しを隣で見ていたせいか、その苦しみの度合いの大きさを実感する。
璃乃ちゃんのことが大好きな竜也はきっと、璃乃ちゃんが生まれた時からずっと彼女を気遣って励まして見守ってきたんだろう。
だから、私が璃乃ちゃんと病院で交わした言葉を今でも覚えているに違いない。
「璃乃ちゃんの涙が止まるように、あんな言葉を言ったけど、きっと璃乃ちゃんにはその言葉の意味は理解できなかったよね」
少し落ち込み気味な空気を明るいものに変えようと、軽くそう言った。
小さくくすりと笑い、真正面から竜也の瞳を見つめて
「まだ幼稚園児だったもんね。わかんないよね。
だからといって、今同じことを言ってもまだ理解できないかな」
首を傾げた。
そんな私に苦笑した竜也は、私の体をその胸に抱き寄せると、私の頭に顎をぽん、と乗せた。
「あの時、璃乃が奈々の言葉を完璧に理解したとは思えないけど、奈々が璃乃を大切に思ってることはちゃんと伝わったと思う。
あの日からしばらくの間、璃乃の口からは奈々のことが大好きだって言葉しか出てこなかったからな」
「ほんと?」
「ああ。あまりにも奈々ちゃん奈々ちゃんってうるさくて、姉貴が奈々に妬いて泣きそうになってたな」