いきなり王子様


それから、リビングの大きなテレビでゲームを思い切り堪能した。

普段自宅にあるテレビなんて比べ物にならないほどの大きなテレビでゲームをするなんて、本当に贅沢だ。

「璃乃ちゃん、いつもここでゲームするの?」

三人でゲームをしながら聞くと、

「うん。でも、おかあちゃんが、あまり長い時間はさせてくれないの。
ゲームをしたかったらちゃんとお勉強してからだって」

不本意な思いを口にする璃乃ちゃんは、リモコンを両手で抱えて体を弾ませている。

竜也も、それほどのゲーム通ではないと言いながらも、どうにか一位をキープしている。

「私、ゲーム持ってないんだよね。だからこんなに下手なのが悔しい。
今日、帰る途中で買って帰って練習してくるから、次は負けない」

殆ど初めてに近いゲーム体験は、それに比例して私の成績を最下位と表示し、小学生に負けている自分に悔しさしか感じさせてくれない。

「あーあ、そこちゃんと飛ばないとだめだよ、奈々ちゃん」

「俺の技をよく見てろよ、このボタンとこれを、一緒に押すといいんだ。
わかったか?」

ゲームを楽しめる技術を持つ領域にいる二人は、何度も私にアドバイスをしてくれるけど、それは単に私の負けず嫌いな性格を煽るだけで、

『絶対買って帰る。今晩は自主練っ』

強い決意で唇をかみしめた。

「大丈夫だよ、璃乃だって一年くらい練習したんだもん。
璃乃が持ってる攻略本を貸してあげるから、竜也おにいちゃんとお勉強してね」

私の悔しさを感じたのか、璃乃ちゃんが気を遣ってくれた。

本当に、周りに気遣いができるいい子だなあ。

私にも竜也にも、手術を間近に控えた不安なんて全く感じさせないし。

「うわあっ奈々ちゃん見てっ。竜也お兄ちゃんよりも数字が増えてるよ」

「え?あ、ほんとだ、すごいね。……竜也、負けてるよ」

「うるせえ、すぐに逆転だっ、おいっそれはやめろーっ」

竜也と本気でゲームを楽しみながら笑っている璃乃ちゃん、本当は、間近に迫った手術が怖くてたまらないはずなのに。



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