笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
コン…

しまっちが先生の
車の窓をノックした

真っ赤な目をした
みどりが、しまっちの
後ろに立っていた

わたしは慌てて車から
降りて、みどりの
元に向かった

『みどり…』

声をかけたわたしに
みどりは少しだけ
笑顔を見せて、頷いた

頷いた意味はわからない

ただみどりの笑顔が
無理やり作ったもの
だという事は理解出来た

『牧野は俺が
送って帰るから』

しまっちの言葉に
みどりは驚いていた

赤く腫れた目で
しまっちを見つめていた

『勝手に決めんなよ。
今日は大地のとこに
泊まらせてくれ』

先生の強い眼差しに
しまっちは下唇を噛んだ

しばらくの沈黙

息をするのさえ
気を遣うほど

『わかったよ。
俺は先に帰ってるから』

しまっちが
ため息をついた

『じゃあ、またな』

しまっちはそれだけを
言って、車で走り去った

しまっちがそこから
居なくなると、みどりは力が抜けたように
しゃがみ込んだ

そして、声をあげて
泣き始めた

先生がわたしに
目配せをして車に乗った

わたしはみどりの隣に
しゃがみ込んで
みどりの背中に
手を当てた

みどりはしゃくりあげて泣いていた

『みどり…』

わたしは言葉も
出なかった
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