114歳の美女
 「もう、堪忍して。もう私は、鬼にはなれん。いややあ。誰か助けて。うううっううう」


 しのぶは布団のなかで呻き、泣き叫んだ。

 布団が小刻みに揺れている。


 ときは涙の向こうにしのぶの布団を見た。
 小高い丘が揺れている。


 (しのぶさんも泣いている!)


 (辛いのは、うちだけやない。しのぶさんも辛いのや。お母ちゃん。何でうち等をこんなに苦しめるんや。何で、うちを産んだんや)


 ときは自分の存在が疎ましかった。


 ときが智也を見た。


 智也は先ほどまでふてくされていたが、今はいびきをかいて安らかに眠っていた。

 その夜、しのぶは一睡も出来なかった。



七転八倒。



 しのぶにとって、地獄のような、長い、長い、長い一日が終わり、新しい朝が来た。





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