上から眼染。
第1話

身長差

昼食時で賑わう食堂
の片隅にある自動販売機―――

「んっんん、ふぅっ・・・っ」

精一杯背伸びをして
最上段のボタンを押そうと必死な
小さい小さい人影が。

(~~~っっなんで
イチゴオレが一番上にあんのー!?)

プルプルと小刻みに震えながら
一生懸命イチゴオレに手を伸ばす。

「おいおい―――」

その小さい人影こと篠崎 悠璃
-身長148㎝-に
男子集団の影が近づく。

「相変わらずちっせーなー。
なぁ、悠璃?」

声の発信源、黒瀬一夜
-身長188㎝-。

アタシはその声のする方に
首だけ動かして
微かに潤んだ瞳でジロリと睨んだ。

「俺も買うんだ、さっさと押せよ」

それに動じることは疎か
アタシを嗤ってやがる・・・っ。

アタシが自動販売機から
一夜に向き直る。

こんな感じに並ぶと身長差40㎝が
目立つというか際立つというか。

「うっせー!このバスケ馬鹿!」

傾き加減が
異様なぐらいの首で一夜を見上げ
毒舌で叫ぶように言い放つ。

「え、褒めてんの?」

「違うわっ!」

馬鹿じゃなくてアホだわ。

鳩尾入れたろか!グーで。


アタシと一夜は幼稚園からの腐れ縁
所謂幼馴染ってやつ?
で一夜はアタシを見ると
いつも必ず突っ掛かって来る
というか見下ろしてくる。


むー・・・ムカツク。


アタシと一夜でギャーギャー騒いでると
一夜の連れがニヤニヤ
頬を緩ませて観覧している。

そしていつもの如く―――

「痴話喧嘩乙ー」

アタシは連れを鋭い眼つきで睨み
全力否定の威圧をかけた。

「むっ・・・」

アタシの反応に一夜が口を尖らせた。
そのあと連れをギロッと睨んだ。

何ゆえそんな反応を・・・?

というアタシの疑問は空しく、
「言っても答えてくれないだろう」
という考えに打ち砕かれた。

そして、
早く早くと急かす一夜が煩いから
再びイチゴオレのボタンに
手を伸ばした。








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